みなさま
2015年1月16日にNICAグランドオープニングが華やかに開催されて、たくさんの人々にご来場いただきました。ご来場いただきましたみなさまありがとうございました。 さて、現在NICAにて開催中の国際現代美術展「DIALOGUES」展をアーカイヴするための事業としてドキュメント作成の編集部を結成いたしました。逐次にレポートをアップしていきます。 現在、開催されている第1期「ひかりのまち」のレビューを掲載いたします。 ご観覧頂きました皆様のご感想をお寄せいただければ嬉しく思います。 なお、展覧会は1月31日まで開催中です。どうぞ、実際に足を運んでいただければ幸いです。 ~~~~~~~~~~~~~~~~ 第1回:Dialogue展「ひかりのまち」レビュー NICA(Nihonbashi Institute of Contemporary Arts)が2015年1月16日(金)にグランド・オープンし、国外で活動するアーティストと国内で活動するアーティストが1人ずつ「ダブルス」というかたちをとって展示を行うDialogue展(キュレーター:嘉藤笑子)が3回シリーズで行われています。第1回展は「ひかりのまち」をテーマに、シャーロット・マクグワン-グリフィン(ロンドン/ベルリン)と栗山斉(茨城)による展示が行われています。 シャーロット・マクグワン-グリフィンは、W・G・ゼーバルトの散文作品「土星の環-イギリス行脚」(1995)に着想を得た「SUBSTANTIAL FORMS」(和紙・白熱灯、他)と細川紙(重要無形文化財)をつくっている埼玉県小川町と本展示会場がある日本橋の「小津和紙」(東京都中央区)でのリサーチを経て制作された「Kami-no-Machi」(木・和紙・ファウンド・オブジェクト、他)を展示しています。「SUBSTANTIAL FORMS」の迷宮のように入り組んだテクスチャーは古代の鳥のような形態をとり、アーティストや観衆の眼が時間をかけて彷徨うなかで想像力が飛翔する様子を見ることができるかもしれません。「Kami-no-Machi」では、和紙にエンボス加工された安藤広重の「鯉」、江戸~明治時代の商家が用いていた帳簿「大福帳」などが、建築家セバスチャン・セイラーとのコラボレーションによってつくられた木と紙の建造物のなかに配置され、その近くには明治神宮で撮影されたとされる木におみくじを結える女性のスナップ写真が掛けられています。木と和紙が接ぎ木のようになっているところや、白紙から鯉が生まれ出るところなどを見ると、空虚から存在が現れる過程を祝福するかのような神々しさと温もりを感じさせてくれるでしょう。 その一方で、栗山斉による作品は、宇宙の始まりと終りについての形而上学的な思索をネオン灯という日常品に落とし込んだ「∴0=1 open ended」(ネオン灯・ガラス・1×10^-5の真空、電線)と北極星・ポラリスの位置変化を超-天文学的な時間の尺度の下でシミュレーションした「∴0=1 -Polaris(BC100000-AD100000)」(ネオン灯・ガラス・電線)を展示しています。「∴0=1 -open ended」の幾何学的に構成されたスパイラル状の形態/空間は円のかたちになって閉じることなく、電線から接続されたネオン灯は静かではあれ、強度をはらんだ暴力的な光を照射しているかのようです。ネオン灯の中の真空には、透明な光と背後のガラスの粒子をとおして、世俗的な視点からみた宇宙の生成、あるいはビッグバンのようなものを感じられるかもしれません。ある宇宙の始源はいつもほかの宇宙の崩壊の後にやって来て、その繰り返しの先に現在の宇宙が存在しているのだとあらためて思い起こされるでしょう。「∴0=1 Polaris(BC100000-AD100000)」では、北極星である"ポラリス"の軌道をネオン灯で辿ることで、幾重ものメビウスの輪の連鎖のような形態が浮かび上がってきます。科学という永遠に続く普遍性において見れば、人間の想像力によって「不動の星」と名付けられたポラリスもまた、生き生きと運動していることがわかります。 オープニング・イベントでは、ダンス・アーティストの加藤範子によるパフォーマンスが行われ、思索に富んだ穏やかな身振りとともに、「Kami-no-Machi」と「∴0=1 open ended」の間で存在と不在をめぐる小品を展開しました。また、同日に行われたアーティスト・トークには、美術批評家の市原研太郎が参加し、「木や紙とガラスという素材の違いはあるが、それぞれ光と影のイメージを表現している。表現に用いられるメディウムの変遷が一つの空間のなかで調和的に配置されていて、美術史の時代的なコンテクストを超えて見ることができた」というように、江戸時代の和紙と大正・昭和になって普及するネオンという2つの異なる時代の光について言及し、江戸時代からつねに伝統と革新が交差していた日本橋の歴史を振り返る契機となりました。 シャーロット・マクグワン-グリフィンと栗山斉によるダイアローグは、木、紙、ネオン灯というさまざまな光の媒体ととても繊細に、ときには暴力的に、つくり込まれたディテールとともに、始まりと終り、あるいは存在と不在といったテーマについて観衆に考えさせてくれるかもしれません。画竜点睛。シャーロット・マクグワン-グリフィンの作品には、大福帳、おみくじ、鯉(竜鯉)と縁起物が満載。NICAという新しいアートセンターの門出とあらためて革新へと歩を進める日本橋の繁栄を祝福しているかのようです。 (DIALOGUES展編集室/Art-Phil)
by a-a-n
| 2015-03-17 01:00
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