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「装飾東京 OrNamenTTokYo」書籍の案内
AANは、2016年9月に書籍「装飾東京 OrnamenTTokyo」を発行いたしました。すでに発行から半年を過ぎてしまいましたが、書籍のご案内文を作成いたしましたので、掲載いたします。
なお、現在、書籍はAANにて取り扱っていますので,Email(info@a-a-n.org)までお問い合わせください。Emailにてお申込みいただいたかたは、3000円+送料にて販売いたします。(350円ぐらい割安よ)

書籍「OrNamenTTokYo」(装飾東京)

「OrNamenTTokYo」(装飾東京) は、2016年9月11日に発行された日英バイリンガル書籍です。本書籍は、Art-PhilのF.Atsumi、アーティスト/リサーチャーのヴェリーナ・グファダー、建築家/リサーチャーのメルセ・ロドリゴ・ガルシア、特定非営利活動法人Art Autonomy Network [AAN]理事長・嘉藤笑子の4者によって、コラボレーション・リサーチ・プロジェクト「OrNamenTTokYo」(装飾東京)のアーカイヴとして編集した出版物になります。    
「OrNamenTTokYo」(装飾東京)の始まりは、東北大震災後において大都市<東京>を再考するために、ヴェリーナ・グファダー、メルセ・ロドリゴ・ガルシア、嘉藤笑子の3者が共同開催した2011年11月に開催された総合イベント「OrNamenTTokYo」(装飾東京)からになります。本事業は、《モバイル・ラボ》という実験的な移動型研究室の形式を採用し、①リミックス(都市散歩)、②イン:タンジビリティ(野外ワークショップ)、③ハウジング(フィルム上映/オープン・キッチンによるセミナー)の大きく3つのプログラムからなります。各プログラムは可変しながら増幅、縮小と姿を変えたプラットフォームであり、そこに参加したアーティスト、デザイナー、建築家、ジャーナリスト、編集者、アート・マネジメントなどの専門家を中心に、さらに5年間にわたり検証・考察を継続してきました。そして、本事業のアーカイヴとして、採録・再編集したドキュメント・ブックを出版するためにF.Atsumiによって編集企画を立ち上げ、新たに都市の根幹となる問題や新しい視座と尺度によって各執筆者が共有財(コモンズ)やコミュニティを含む都市論考をしたものです。
 ヴェリーナ・グファダーとメルセ・ロドリゴ・ガルシアが「OrNamenT Tokyo」(装飾東京)について創造的に記述する「関係性の幾何学」とは何か? まち歩き、ワークショップ、オープン・キッチン、セミナーからなるアート・プロジェクトへの理論的な検証・考察とともに、「新しい公共」をめぐるアート/デザインの境界性と都市におけるオルタナティブ空間の来るべき可能性が浮かび上がる。別冊の写真集は、多言語コミュニケーションを必要とする複合的な背景をもつ人々が河川敷の空きスペースに一同に介して、ハプニング的に危機的状況に巡り合った事象のなかで相互に助け合い、苦難を乗り越えていく実験的な防災ワークショップの実録である。メルセ・ロドリゴ・ガルシアと嘉藤笑子らによるワークショップの記録写真とともに、アーティスト・藤井光が8台のカメラを同時撮影したワークショップのヴィデオ映像を編集して載録した。コミュニティの(再)創造にむけてアート・プロジェクトに携わるすべての人に贈る、公共財(コモンズ)となりうるアートをつくるための記念碑的なセオリーブックといえるものです。
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<目次>
・RE:会話1
・シード・ボールズ・ディストリビューション/BCLゲオルグ・トレメル+福原志保
・怠慢まちあるきガイド、という都市観察の仕掛け/岸健太
・路地を歩きながら考えたこと/曽我高明
・ガザの風景ー「計画」時代の黄昏をめぐる連想/岸健太
・RE:会話2
・バルーン・オーケストラ:構造を再想像するための都市散歩/ヴェリーナ・グファダー
・装飾の制作ー時間計測法11:11:2011 14:00-16:00 二子玉川/メルセ・ロドリゴ・ガルシア
・現代都市における声と音/キム・ジュニアン
・RE:会話3
・ネットワーク・システム―江戸ー東京、回想譚/デヴィッド・ディヒーリ
・{再}集合する公共空間ー現代の東京における抵抗、祝祭、コラボレーションの発展的地理/クリスチャン・ディマ
・ピクニック・ライト/太田浩史
・東京、船、水面のこと/井出玄一
・RE:会話4
・フリーカルチャーと「連帯」のコミュニケーション/ドミニク・チャン
・オーナメント・トーキョー雑感/嘉藤笑子
・RE:会話5
・危機の時代のアートー編集者からの手紙/F.アツミ
別冊:IN:Tangililitiesー二子玉川、東京2011年11月11日/feat,藤井光

<奥付>
タイトル:OrNamenTTokYo(装飾都市)
オーガナイザー:ヴェリーナ・グファダー、メルセ・ロドリゴ・ガルシア
コ・オーガナイザー(協働組織):アート・オウトノミー・ネットワーク[AAN]
表紙デザイン:ヴェリーナ・グファダー
主編者:F.アツミ
編者:ヴェリーナ・グファダー、嘉藤笑子
著者:BCLゲオルク・トレメル+福原志保、岸健太、曽我高明、ヴェリーナ・グファダー、メルセ・ロドリゴ・ガルシア、キム・ジュニアン、デイヴィッド・ディヒーリ、クリスティアン・ディマ、太田浩史、井出玄一、ドミニク・チェン、嘉藤笑子、F.アツミ、藤井光
写真集撮影者:メルセ・ロドリゴ・ガルシア、嘉藤笑子、藤井光
発行者:アート・フィル、アート・オウトノミー・ネットワーク
装丁:A4サイズ、白黒60ページ、写真集:A5サイズ、4色16ページ
2016年9月11日初版第1刷発行
発行部数:200部
ISBN: 978-4905037033
価格:3,111円+税
発行所:アート・オウトノミー・ネットワーク[AAN]
住所:東京都中央区日本橋大伝馬町13-1 Creative Hub131 6階
E-mail: info@a-a-n.org, URL: http://www.a-a-n.org

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by a-a-n | 2017-03-22 16:02 | ドキュメント | Comments(0)
DIALOGUES Curator's 総評
台風が来るぐらいですから、すっかり初夏ですね。
毎日、気温もグングンと上昇しているようです。

DIALOGUES展が、終了してすでに2ヶ月が過ぎましたが、テキストによるアーカイヴを進行しています。
本展キュレーター嘉藤笑子の展覧会総評をアップします。
ちょっと長文ですが、本展覧会に対する思い入れが十分に分かっていただけると思います。
どうぞ、よろしくお願いします。

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DIALOGUES展 国際現代美術展
~地域プロジェクトの国際性~ 嘉藤笑子

◆国際現代美術展「DIALOGUES」
 2015年1月16日から3月14日までの長期間にわたる国際現代美術展「DIALOGUES」を開催しました。会場は、NICA:Nihonbashi Institute of Contemporary Artsという日本橋にオープンした小さなアートセンターでした。本事業は、Art Autonomy Network[AAN]が主催事業として嘉藤笑子のキュレーションによって企画されたものです。
初日は、NICAのグランドオープニングが華やかに開催され、東京の本格的なアートセンターの始まりを200人も超える人々が祝賀しました。NICAの拠点である日本橋は、伝統と歴史を重んじる商業地域として広く知られた地域ですが、最近では新しい商業施設が軒並みに建設されている再開発が活発な地域です。NICA周辺地域は、複数のギャラリーが存在し、CET(Central East of Tokyo)におけるカルチュラルタウンとして認知される場所です。つまりは、21世紀型の新たな文化拠点として、国際文化都市に相応しいエリアになりつつあるというものです。こうしたポテンシャルを活かした国際現代美術展を開催し、本企画を皮切りに先駆的な文化拠点を設立していきたいと思いました。インターナショナルな感性を意識し、その環境や条件に相応しいアーティストを選出していくことでもありました。
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本展覧会「DIALOGUES」は、日本と海外アーティストによるそれぞれ2組を1ユニットとして構成し、3期連続に開催していく合計6人のグループ展でした。「DIALOGUES」は、<対話>という意味をもつことからも分かるように、国内外アーティスト同士が、対話をしながら進めていくプロセスワークでもありました。また、その対話は、アーティスト同士に留まらず、キュレーターやインターン、ボランティア、地域住民、アート関係者、観客などの領域を超えた広範囲にわたる人びとの対話を通して築かれた関係性を示すものでした。選出された作家たちにとっては、文化的背景や生活環境、母国語などが異なり、展覧会を機会に初めて出会い、協働で制作をしていくのですから、簡単なことではありません。限られた条件のなかで、短期間で展覧会を作り上げていくべき冒険的なプロジェクトでしたが、キュレーションの立場から見れば、その野心に適う人物が選ばれたとも言えるでしょう。
さらに展覧会は、「ひかりのまち」「かわのまち」「はしのまち」という題されたテーマがあり、それらはアーティストたちの会話のなかから抽出されたキーワードでもありました。この3期に分かれた展覧会は、それぞれ10日間の展示期間という短いものでしたが、それぞれのなかでアーティスト2名とゲストを含むトーク・イベントを開催しました。それらにも小さなタイトルがあり、トピックを設けることで各テーマにエッジを際立たせる役目にもなっていました。
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◆第1期「DIALOGUESひかりのまち」
それでは、一つひとつの展覧会について振り返ってみたいと思います。まず、第1期「DIALOGUESひかりのまち」は、栗山斉(取手)とシャーロット・マクグワン-グリフィン(ベルリン)のふたりのアーティストによる展覧会でした。栗山斉は、コンセプチュアル作品を中心に「無」と「存在」について言及している作家です。彼は、宇宙の始まりと終わりをひかりによって具現化しようとガラスチューブ(ネオン管)を用いた大掛かりなインスタレーション「∴0=1 open ended」を展示しました。螺旋形を描く光の輪は、すべてが輝いているのではなく、瞬いているものは複数のネオンだけで、螺旋の終わりは宙に吊られたまま、行き先を失うように流れているのでした。どことなく脆弱な様子は、宇宙の移ろいを示すようでむしろリアリティを現出させるとも言えます。
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この大きな作品に対置しているのが、マクグワン-グリフィンの和紙や洋紙を用いた大きなインスタレーションでした。彼女は、施工スタッフとしてセバスチャン・セイラーを帯同して来日しました。彼は、建築家であり大工として美術展の施工をしている経験から選ばれたようで、来日した直後から休まずにインスタレーションの構造体を構築したのでした。マクグワン-グリフィンは、これまでも大きな紙のインスタレーションを手がけてきましたが、今回は日本橋が江戸時代から続く商店街だった事実から、その当時に日常的に使われていた「大福帳」をテーマに「Kami-no-Machi」を制作しました。当時、商店の帳簿として使われていた「大福帳」は、細川紙という和紙を束ねた帳面でした。細川紙は、2014年にユネスコ無形文化遺産に「和紙・日本の手漉和紙技術」に登録された和紙のひとつで、我が国における伝統技術を継承する重要な文化財でもあります。今回の展覧会のために細川紙の産地である埼玉県比企郡小川町までアーティストと出かけて、細川紙産の大福帳を借用してきました。アーティストにとっては、和紙の手漉きを見ることもはじめであり、原材料である楮から和紙の素材を製作工程に触れることも初体験でした。こうした和紙の原材料や素材が展覧会に提供され、それらは、インスタレーションに活用されました。大きく母胎のように覆いかぶさる和紙の立体から薄らと漏れる白熱灯の灯りは、オレンジ色で柔らかく、かつての町人屋敷では日常として見られた光景を彷彿させました。
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NICAの小さなギャラリーには、ふたりの作家の小作品が展示されました。マクグワン-グリフィンは、W・G・ゼーバルトの散文小説「土星の環-イギリス行脚」(1995)から着想を得た「SUBSTANTIAL FORMS」(和紙・白熱灯、他)を展示しました。それは、和紙漉きの技術を学んだドイツ人職人による隙かしを施した漉き和紙作品で、照明によって2枚の重ね合わせた鳥の姿が浮き彫りになる小品でした。小説家・ゼーバルトは、ドイツ人でイギリスの大学で教鞭を取りながらドイツ語で小説を書いていました。彼の作品は、異邦人としての自らの姿と小説のなかに登場する主人公が重なり、異国のなかで時空を超えて彷徨っていく幻想小説でありながら、実際の旅程を綴る紀行文のような錯覚をもたらす、どこか不思議な世界観を持っているものでした。その作品が、ドイツに暮らすイギリス人である異邦人としての彼女が、日本に旅する姿を体現しているようで、タイトルに付けた<実体>という意味が、より仮想空間へと馳せるような気がするのでした。
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栗山は、ネオン管が花のようにグルグルと回っている作品「∴0=1-Polaris (BC100000-AD100000)」を展示空間の北に位置させました。この作品は、地球が誕生してから現在までの北極星・ポラリスの軌跡を可視化したものでした。まさに天文学的時間を経て地軸が振れている事実を顕在化した作品ですが、科学的な根拠に導き出された星の軌道であっても、ロマンティックな時空間の壮大な旅を思わせるのでした。作家の意図に従えば、科学の不動性は誤謬であり、普遍的な可動性に真実があるということでしょうか。人間の感傷に及ばない科学の普遍性にこそリアリティがあるということかもしれません。
ふたりのアーティストの競合ともいえる展示は、ギャラリー空間が溢れるような光で満ちていながら、その灯りが及ばない部分にも深く影響し、多くの影が潜んでいるのでした。つまりは、すべてが陰陽のなかで作品が充満していることで、観客は宇宙の塵のような浮遊物のようでもあり、母胎のなかで胎児が眠る永遠の安息のなかにいるようでもあったのです。
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◆第2期「DIALOGUESかわのまち」
第2期「DIALOGUESかわのまち」は、ジョン・ササキ(トロント)と森田浩彰(東京)によるユニット・プロジェクトでした。ふたりは、「DIALOGUES」をコラボレーションとして素直に受け止めプロセス重視の制作方法をとりました。それは、アーティスト同士が頻繁に対話を交わしながらチームワークによってプロジェクトを成立させる<愉快な仲間たち>の成果ともいえるものでした。ふたりは同い年のアーティストということもあって、意気投合するのも早く会話は初めから弾んでいたといえるでしょう。
日系3世として生まれ、トロントを拠点に活動するササキは、2014年に初めて来日したのを機に、日本人としてのルーツを探る気持ちを持っていました。しかしながら、本プロジェクトでは森田とのコラボレーションに集中し、異国における同胞の立場を全うしたのでした。ササキは、日本橋という名前から橋の下に流れる川の存在を指摘しました。それを受けて川のなかで“水中ドローン”による撮影を森田は提案しました。水中ドローンとは、実際には水中カメラをケーブルで繋ぎコントローラーで制御する水中ロボットのことでした。ドローンは、小型飛行機による空中撮影のことを指していますが、呼び方も含めて周知され始めたばかりの最新技術の感がありましたが、その最新性がアーティストにとっても惹かれる技術だったのでしょう。水中ロボットや機材のレンタル、その操作確認、スタッフ管理など撮影準備のために情報交換は頻繁に行われ、ついに快晴の撮影日を迎えることになりました。
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撮影場所は、東京の川に詳しい井出玄一氏(NPO法人ボート・ピーピル・アソシエイション理事長)からアドバイスを受け、穏やかな流れの“亀島川”になりました。この川は中央区の霊岸橋から亀島橋あたりの流域で日本橋川から分流したのち隅田川に合流する一級河川のことです。江戸時代は、徳川水軍の御船手奉行所のあった船舶の検閲所であり将監河岸とも呼ばれた歴史的なところです。海に近いこともあって潮位によって水位変動がある場所ですが、川辺まで階段で降りることができ、撮影には最適な場所でした。今回の撮影は、川底に埋まっているかもしれない宝探しを水中ドローンによってドキュメンタリー撮影するもので、撮影前には何も見つからない場合などの懸念もありましたが、見事に多数の埋蔵物を探し当てたのでした。川底の埋蔵品を探す人物は、プロのダイバーを依頼し、プロによる河川の潜水は慣例であるとのことでした。拾得物は、マウンテンバイクや自家用車のゴムタイヤ、梱包材に包まれたDVDプレヤー、ラジオカセット(SONY)、ピンクの長財布、鉄製パイプ、紺色の作業服(上着)、剥き出しになった小型モニターのブラウン管、タバコが詰まったガラス瓶、木材などすべてが長年にわたって川底に埋まっていたため石灰化していたり、貝殻がびっしりとついていたりと、その時間の経過を顕著に表わす状態でした。それらは、ほとんどが川底のヘドロにまみれた埋蔵品で、洗浄して乾燥するまでは酷い悪臭を放っていました。撮影中の水中ロボットは、アーティストが交代で作動し、片方はモニターをチェックしながら埋蔵品を発見するとダイバーに指示を伝え、片方は外部撮影や埋蔵品の引き取りをするという方法で速やかに進行していきました。来日から数日しか出会う時間がないなかでも、よいコミュニケーションがとれたことで、撮影から編集、インスタレーションまでスムースに進みました。
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水中ドローンで撮影された映像や、別カメラで河川周辺から撮影した映像など、複数の素材を15分程度の映像作品を仕上げました。映像作品は、「Under the Kamejima Bridge」とタイトルを付けて、ギャラリー壁面に大きくプロジェクションしました。スクリーンに反射する光だけが会場の照明となり、水揚げされた拾得物は、古びた廃棄物にも関わらず艶かしく光っているのでした。
小ギャラリーでは、亀島川の生水を入れた数十本のペットボトルをテーブルに配置し、観客に無料で配られました。そこには、「亀島川の水です。ご自由にお持ち帰り下さい。NICAは一切の責任を持ちませんので、ご自分の責任においてご使用お願いします」という日英文の注意事項がついていました。期間中に持ち帰る人数が少なかったのは、川底の残骸になった拾得物の姿のせいでしょうか。今回、展示されたアイテムは、15分間のヴィデオ作品、拾得物、川の水、という少数でありながら、一貫したストーリーのなかで語られる川の話でした。そのシンプルさ故に発見することが多く、人間の営みと川の流れという永続性、時空を越える壮大な宇宙観など森羅万象との関わりが明らかになり、「川」が人びとに与えている存在の大きさに気が付くことができたように思います。
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◆第3期「DIALOGUESはしのまち」
第3期「DIALOGUESはしのまち」は、サム・ストッカー(ロンドン/東京)と近藤恵介(東京)による絵画とインスタレーションによるコラボレーション作品でした。ストッカーは、当時、東京藝術大学大学院修士課程(現在、博士課程)に在籍していたこともあり、東京を拠点に活動をしています。したがって、他の2つのチームより日本作家と長い時間を共有できるだろうと考えたのですが、本展に参加することになってから英国と日本を頻繁に行き来せざるえない状況になり、残念ながら長い時間を近藤と共有することはできなかったのが実情でした。それは図らずして、他期間のアーティストたちと条件は一緒になった訳ですが、その難局においても両者が多くの会話を通してコミュニケーションを深めることができたと思います。
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ストッカーは、絵画出身の作家ですが、英国にいるときからインスタレーションを中心に作品を制作している作家です。そして近藤は、日本画を専攻し、日本画の手法や素材を踏襲する表現をしながらも、近代日本画の領域を逸脱するための実験的なアプローチを行ってきました。この両者が、本展を通して出会うことで、平面/立体といったカテゴリーを超越して斬新な表現ができると考えておりました。
両者は、出会いから自作についての丁寧に説明をし、それぞれのアイデアを交換しながら作品を制作していきました。特にストッカーの作品は「DIALOGUES、はし」と題して、明治44年に日本橋が石造になったときの図面や画像資料などを手に入れて、麒麟像の台座部分を抽象的に再構築し、ギャラリー空間の中央に橋をかけたような大きなインスタレーションを設置しました。廃材によって再生された橋は、これまで日本橋が経てきた長い歴史をその形態や造作に刻み込み、さらに作家たちの会話を包括しつつ、大きなダイアローグへと集約されたものといえるでしょう。本作品の根幹を成す“日本橋”を熟知し解体したうえで、再構成させていく手法は、どこかモンドリアンのような抽象絵画のようでもあり、光を追い求めた印象派の絵画のようでもあります。そして、ストッカーと近藤のそれぞれが作品のなかでキャッチボールのごとく軌跡を残しているのも特徴的です。例えば、近藤の絵画のなかに橋の構造体が部分的に描かれていたり、絵画のなかに表出される矩形が、切り絵となって立体のなかに貼り付けられたり、と絵画が立体に寄り添っていく姿が見て取れます。そうした断片的な痕跡は、人体が触れ合うごとく相互関係の記憶を付着させているのでしょう。
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近藤の平面作品「私と状況(DIALOGUES)」は、正方形のパネル(53cmx53cm)を基本とする絵画を複数に連結することで、さまざまに表情を変えていく連作になっています。場合によっては、1点のみ、3点連結、4点連結といった具合です。ギャラリーのどこに展示するのかによって、連結の長さを変更させていくサイトスペシフィックな作品にもなっています。会場の中央を占める巨大な廃材の橋のインスタレーションは、複雑な構成やメッシュ越しに覗きこむことで多彩な景色を提供しています。それと絡む絵画の配置は、鑑賞者の視点のずれや立ち位置によって異なる形態に変容し、絵画に新たな形態や異なる色彩を加えていく作品になっています。つまり、そこに置かれた個々のオブジェや流動する人物などすべての環境を一体化していくスフィア的な作品であり、完全にタブローといった平面を逸脱するものになっています。その反面、視覚化されたすべてのコンテクストを介入させていく画中画の手法を取り入れているともいえるでしょう。彼のストイックな構成や淡い色彩は、アグレッシブな破壊やパラサイト的な侵食を否定するものですが、橋のインスタレーションとの共鳴を余儀なくさせていくことで、複層化された蒔絵のような表現となったともいえるかもしれません。
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◆まとめ
幾重にも複雑な表情を持つ本展覧会は、アーティスト同士の会話や丹念なコミュニケーションが重ねて行われたことで、多彩な表現を加えていることに間違いありません。ニコラ・ブリオーの『関係性の美学』の解釈は、昨今の地域系アートと呼ばれる特定のエリア内におけるコミュニケーションを通した表現に照射してきました。その多くが地域活性化のために重宝されているコミュニケーションを基盤にし、作家と地域住民といった主従関係に期待が込められ、「現代アート」は都合のよいキーワードとして重用されてきたといえるかもしれません。「関係性」という言葉が、容易に使われるようになったのは、ブリオーの思想が市民に理解しやすかったというより、地域のなかで発表されてきた作品が状況証拠のように事実と一致していったからといえるでしょう。
「ダイアローグ」という方法が、この地域で展開されている「関係性」と同義であると判断するのは容易ですが、実際には、もっと率直な構造であり、アノニマスな地域住民というより、ギャラリーという区切られた環境のなかで出会う<作家、キュレーター、観客>といった相対的なコミュニケーションに重きを置いているのです。本来ならば幅広い人達と「関係性」を築くことでアートの影響力を高めるのが重要かもしれませんが、あえて狭域にすることで「美学」に対する深化を求めたといえるでしょう。もちろん、それは内閉化していく後退的なアプローチではありません。わが国の地域プロジェクトが、コミュニティ根ざした作品制作を積極的に推奨してきたことで身近にアートを認知することは容易になってきたかもしれませんし、一見するとアートはわかりやすくなってきたかもしれませんが、依然としてその存在意義は誤解されたままと言わざるえいないのです。
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したがって、今回の「DIALOGUES」は、真摯な姿勢で美術と向き合うことで、わが国の優れた現代美術を深く洞察していこうというものでした。そのため、現代美術の批評を内包した国際美術展であるべきだと考えていました。そして国際文化都市に相応しい東京の中心地である日本橋を舞台にしたことで、地域活性化を枯渇するエリアとは異なるコンテクストを露呈できたと言えると思います。各展覧会には、「ひかり」「かわ」「はし」というテーマが付けられましたが、これらは日本橋にとって誇るべき文化資源でありながら、特定地域のみが有する価値観ではありません。むしろ、どこの地域でもありうる世界共通の有効資源といえるでしょう。今回の展覧会が、その世界共通の文化的価値を深めたと思っています。これまで地域振興のための文化事業は、アートを悪用すると揶揄されてきましたが、それはアートにとって不可欠な美の真価について言及してこなかったからともいえます。また、その真価に対する理論的評価や方法を形成することができないままだからではないでしょうか。すでに地域プロジェクトは成熟期になり、今後につながる国際的価値を求める時期に来ていると言えるでしょう。
本展覧会では、グローバルとローカルといった相対関係を意識し、双方に通用するアーティストを選出していますが、それらはアカデミックな視座とラディカルな表現を併せもつ、美の真価につながるアートを紹介できただと自負しています。それによって斬新性に満ちた重層的なコンテクストを表出させることができ、元来の<アートの魅力>を先駆的に紹介できたと信じるものです。
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※前年に富井大裕個展「繊維街 日本橋」(2014年5月25日~6月14日)をプレ企画としてAAN主催で開催しているので、NICAでの展覧会は2回目の開催でした。
※「埼玉伝統工芸会館」(小川町)和紙工房長・谷野裕子氏より「大福帳」を2冊借用しました。どちらも明治・大正時代の実際に使われていた「大福帳」。谷野氏は、国指定の重要無形文化財技術継承者として、個人の伝統工房「手漉き和紙たにの」を運営しています。※ジョン・ササキは、「遠足プロジェクト」(カナダx日本共同事業)というアーティスト・イニシアティヴの東日本大震災復興プロジェクト(2011年-現在)に参加し、廃棄処分になる予定だった中古のランドセルをアート作品にしていく事業に参加した。総勢80人を超えるアーティストが日加合同で制作を行い日本とカナダで巡回展を実施した(現在、カナダ巡回中)。2014年に本事業の一環で宮城県女川町にてワークショップを実施するため4人のカナダ人作家と一緒に来日し、「遠足プロジェクト」に関連した「神山いいね!」(AAN主催)という徳島県神山町の子どもワークショップに参加した。
※映像作品:Title: Under the Kamejima Bridge、Year:2015、Material: HD Video with sound, salvaged objects、Duration:14mins、Size: Dimensions Variable、Artists:Jon Sasaki, Hiroaki Morita
※ペットボトル作品:Title: Free water from Kamejima River、Year:2015、Material: Water, Bottles、Size: Dimensions Variable
※近藤恵介作品――「私と状況(DIALOGUES,1)」(S10パネル2点:53×106cm/岩絵具,水干,膠,墨,鳥の子紙,板,2015)、「私とその状況(DIALOGUES,2)」(S10パネル4点:53×212cm/同前)、「私とその状況(DIALOGUES,3)」(S10:53×53cm/岩絵具,水干,膠,墨,鳥の子紙,2015)
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by a-a-n | 2015-05-11 21:34 | ドキュメント | Comments(0)
第2期DIALOGUES展「かわのまち」レビュー
第2回DIALOGUES展「かわのまち」 レビュー

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 NICA(Nihonbashi Institute of Contemporary Arts)で開催されている第2回「DIALOGUES展~ダブルス×3連続国際展~」では「かわのまち」をテーマに、ジョン・ササキ(トロント・カナダ)と森田浩彰(東京・日本)による展示が行われました(キュレーター:嘉藤笑子)。

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 ジョン・ササキと森田浩彰は本展に先立ち、日本橋にある亀島橋(東京都中央区)の下で、水中ロボットを用いて川底に滞積している廃物を探索しました。朽ちた流木、石灰化したコンクリート塊、GREEN HOUSE製のDVDプレーヤー(未使用)、LANケーブル(緑)、タバコの吸殻が入ったプラスチック瓶、GIANT製のマウンテンバイク、SONY製のアンテナ付きラジオカセット、ピンク色のスカルが施された長財布、鉄製のパイプ、自動車用のゴムタイヤ、紺色の作業服(上着)、ガラスの小型モニターと思われるものなど、川岸に引き上げられたさまざまな廃物は、展示スペースを構成するファウンド・オブジェクト(発見されたもの[オブジェ])へと姿を変えて展示されることになります。また、亀島川で採取された水はペットボトルに封入され、「亀島川の水です。ご自由にお持ち帰り下さい」(“FREE WATER FROM KAMEJIMA RIVER”)という掲示とともに展示され、観衆には無料で持ち帰ることが許可されています。

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 展示スペースでは大型スクリーンに亀島川での一連の作業を記録したビデオ映像(約15分間)が映写され、引き揚げられた瓦礫や廃材をめぐって声をかけ合う2人のアーティストと協力者たち、そして時に差し挟まれる街なかの人々の面影とともに、亀島川周辺の風景を身近に感じることができます。水中ロボットからの映像をモニターで確認するジョン・ササキ、ノートパソコンと水中ロボットをつなぐコードを手繰りよせる森田浩彰、廃物を引き上げるダイバーたち、そして橋上から川岸を覗き込む歩行者たち。淡々としたカメラワークから眺められた亀島川の風景の向こうに、市民とアーティストたちの間に生まれる目に見えない緊張関係を見てとれるようでした。

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トークイベント「かわをめぐるアートのはなし」07/02/2015

 オープニングの翌日に社員食堂(Creative hub 131)で行われたイベント「かわをめぐるアートのはなし」では、ジョン・ササキ、森田浩彰、嘉藤笑子とともに、井出玄一(ボートピープル・アソシエーション)、藤井政人(国土交通省)、中崎 透(アーティスト)、武藤 勇(N-mark)が参加しました。「かわ」の現在的な状況について、それぞれのユニークな活動の視点から歴史、環境、行政規制などを題材にした議論が交わされました。

ジョン・ササキは日本との関わりを個人的な視点から振り返りながら、カナダと日本の「かわ」を巡る文化史的なエピソードを紹介しました。また、亀島川にかかる亀島橋を”ブリッジ”ということばに置き換えて象徴化することで、文化や歴史、人々をつなぐ架け橋として捉えていると話し、本プロジェクトをその「実践的なクリエイティヴィティ」として位置づけました。その一方で、森田浩彰は見えないものを見えるようにするというアーティストとしての存在意義に触れつつ、「かわ」を政治的に排除されてきたものや人々の歴史=物語を見直すための表象空間として見立てていきました。その後、嘉藤笑子はキュレーターの視点から、明治期以降の近代化と震災や戦災を経て、「かわ」が見たくないものを覆い隠す場所となっていったことに触れ、アーティストが「かわ」とともにアート作品をつくったり、アート・プロジェクトを行うことで、本来は誰のものでもない「かわ」の公共性を新たに描きなおせるのではないかと語りかけていきました。

 また、井出玄一が河川をボートでピクニックのようにめぐる「ボートピープル」の活動報告とともに江戸時代の「かわ」では人々が川辺に向かって商業活動を営んでいた歴史について話すと、藤井政人は水辺を基点としたまちづくりを提案する「ミズベリング」のプロジェクトの紹介とともに「かわ」にかかわるアート・プロジェクトなどから市民・企業・行政が協働して取り組むソーシャル・デザインの可能性を提示しました。さらに、中崎 透は「プロジェクトFUKUSHIMA!」で人々がもちよった生地をつなぎ合わせる「福島大風呂敷」、「水都OSAKA」や「黄金町バザール」などでの制作活動を振り返って、水や水辺にかかわるアート・プロジェクトの実際から見えてきた「かわ」をとりまく複雑な公共機関の管理体制や手続きを指摘したのに対して、武藤勇は現代アートを市民社会に息づかせる「中川運河リミコライン・アートプロジェクト」の活動報告とともに、市民や企業の関わりあいから広がるアート・ネットワークのつくり方について紹介しました。

その他にも、生活汚水や工業排水が流れ込む河川、村落などから排除された人々が住む川辺、ホームレス(浮浪者)がテントを広げて休む河川敷、あるいは東京オリンピックのために消えゆく未整備の護岸など、近代の都市生活において「かわ」が大衆生活を営む人々に対してネガティブな印象を与えるダークサイドとして認識されていたというエピソードがさまざまなかたちで語られ、「かわ」のもつ周辺性や境界性が浮かび上がることにもなりました。

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 トークイベントを振り返ったうえで、もう一度、展示スペースのファウンド・オブジェクトに眼を向けてみましょう。冷たく暗い川底から引き上げられた異物は江戸-東京-日本をめぐる歴史の証言となって、あらためて陽光の下に照らし出され、アートとして解釈されることになります。ファウンド・オブジェクトの布置を辿る観衆の歩みとともに、日本の近代史を織りなす都市空間と人々の関係性、あるいは「かわ」の文化や歴史は、思い思いの物語となって見なおされることになるでしょう。
 21世紀の「かわ」の水は、近代化を押し進めた20世紀と同じように不都合な真実を覆い隠す“禊ぎの水”であり続けるのでしょうか、それとも今は暗渠のように見えなくなってしまった「かわ」の可能性を新たに引き出す“救いの水”になるのでしょうか。アーティストから「フリーウォーター」として提供される亀島橋の水の使いみちと同じように、「かわ」をめぐるそこから先の物語は会場に訪れた観衆とともにあるのかもしれません。
(DIALOGUES展編集室/Art-Phil)
Photo by Michiko Isono
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by a-a-n | 2015-03-18 00:01 | ドキュメント | Comments(0)
「DIALOGUESひかりのまち」@NICAレビュー
みなさま
2015年1月16日にNICAグランドオープニングが華やかに開催されて、たくさんの人々にご来場いただきました。ご来場いただきましたみなさまありがとうございました。

さて、現在NICAにて開催中の国際現代美術展「DIALOGUES」展をアーカイヴするための事業としてドキュメント作成の編集部を結成いたしました。逐次にレポートをアップしていきます。
現在、開催されている第1期「ひかりのまち」のレビューを掲載いたします。
ご観覧頂きました皆様のご感想をお寄せいただければ嬉しく思います。

なお、展覧会は1月31日まで開催中です。どうぞ、実際に足を運んでいただければ幸いです。


~~~~~~~~~~~~~~~~
第1回:Dialogue展「ひかりのまち」レビュー

 NICA(Nihonbashi Institute of Contemporary Arts)が2015年1月16日(金)にグランド・オープンし、国外で活動するアーティストと国内で活動するアーティストが1人ずつ「ダブルス」というかたちをとって展示を行うDialogue展(キュレーター:嘉藤笑子)が3回シリーズで行われています。第1回展は「ひかりのまち」をテーマに、シャーロット・マクグワン-グリフィン(ロンドン/ベルリン)と栗山斉(茨城)による展示が行われています。
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 シャーロット・マクグワン-グリフィンは、W・G・ゼーバルトの散文作品「土星の環-イギリス行脚」(1995)に着想を得た「SUBSTANTIAL FORMS」(和紙・白熱灯、他)と細川紙(重要無形文化財)をつくっている埼玉県小川町と本展示会場がある日本橋の「小津和紙」(東京都中央区)でのリサーチを経て制作された「Kami-no-Machi」(木・和紙・ファウンド・オブジェクト、他)を展示しています。「SUBSTANTIAL FORMS」の迷宮のように入り組んだテクスチャーは古代の鳥のような形態をとり、アーティストや観衆の眼が時間をかけて彷徨うなかで想像力が飛翔する様子を見ることができるかもしれません。「Kami-no-Machi」では、和紙にエンボス加工された安藤広重の「鯉」、江戸~明治時代の商家が用いていた帳簿「大福帳」などが、建築家セバスチャン・セイラーとのコラボレーションによってつくられた木と紙の建造物のなかに配置され、その近くには明治神宮で撮影されたとされる木におみくじを結える女性のスナップ写真が掛けられています。木と和紙が接ぎ木のようになっているところや、白紙から鯉が生まれ出るところなどを見ると、空虚から存在が現れる過程を祝福するかのような神々しさと温もりを感じさせてくれるでしょう。
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 その一方で、栗山斉による作品は、宇宙の始まりと終りについての形而上学的な思索をネオン灯という日常品に落とし込んだ「∴0=1 open ended」(ネオン灯・ガラス・1×10^-5の真空、電線)と北極星・ポラリスの位置変化を超-天文学的な時間の尺度の下でシミュレーションした「∴0=1 -Polaris(BC100000-AD100000)」(ネオン灯・ガラス・電線)を展示しています。「∴0=1 -open ended」の幾何学的に構成されたスパイラル状の形態/空間は円のかたちになって閉じることなく、電線から接続されたネオン灯は静かではあれ、強度をはらんだ暴力的な光を照射しているかのようです。ネオン灯の中の真空には、透明な光と背後のガラスの粒子をとおして、世俗的な視点からみた宇宙の生成、あるいはビッグバンのようなものを感じられるかもしれません。ある宇宙の始源はいつもほかの宇宙の崩壊の後にやって来て、その繰り返しの先に現在の宇宙が存在しているのだとあらためて思い起こされるでしょう。「∴0=1 Polaris(BC100000-AD100000)」では、北極星である"ポラリス"の軌道をネオン灯で辿ることで、幾重ものメビウスの輪の連鎖のような形態が浮かび上がってきます。科学という永遠に続く普遍性において見れば、人間の想像力によって「不動の星」と名付けられたポラリスもまた、生き生きと運動していることがわかります。
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 オープニング・イベントでは、ダンス・アーティストの加藤範子によるパフォーマンスが行われ、思索に富んだ穏やかな身振りとともに、「Kami-no-Machi」と「∴0=1 open ended」の間で存在と不在をめぐる小品を展開しました。また、同日に行われたアーティスト・トークには、美術批評家の市原研太郎が参加し、「木や紙とガラスという素材の違いはあるが、それぞれ光と影のイメージを表現している。表現に用いられるメディウムの変遷が一つの空間のなかで調和的に配置されていて、美術史の時代的なコンテクストを超えて見ることができた」というように、江戸時代の和紙と大正・昭和になって普及するネオンという2つの異なる時代の光について言及し、江戸時代からつねに伝統と革新が交差していた日本橋の歴史を振り返る契機となりました。
 シャーロット・マクグワン-グリフィンと栗山斉によるダイアローグは、木、紙、ネオン灯というさまざまな光の媒体ととても繊細に、ときには暴力的に、つくり込まれたディテールとともに、始まりと終り、あるいは存在と不在といったテーマについて観衆に考えさせてくれるかもしれません。画竜点睛。シャーロット・マクグワン-グリフィンの作品には、大福帳、おみくじ、鯉(竜鯉)と縁起物が満載。NICAという新しいアートセンターの門出とあらためて革新へと歩を進める日本橋の繁栄を祝福しているかのようです。
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(DIALOGUES展編集室/Art-Phil)
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by a-a-n | 2015-03-17 01:00 | ドキュメント | Comments(0)
OrNamenTTokYo 第2日目In/Tangibilities
OrNamenTTokYoの第2日目は、街歩きから1週間たった11月11日でした。
金曜日ということもあって、どの程度集まるのかしらと思っていましたが、結構な人数でした。
しかも天気予報でさんざん12月中旬ぐらいの寒さになると言っていましたが、どんぴしゃの冷たい雨の日でした。みんな凍え死にそうな表情で多摩川の河原に降りていきました。

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あまりの寒さに、最初の作業は「続行するか、日程を変えて行うか」という挙手でした。ここまで来て止めるより、やってしまえという気持ちが勝ったのでしょうか。とにかく早くやってしまおう!ということで、ワークショップは始まりました。
今日のお題は、「私たちの日常を形作り、また起こりうる日常を「実践(プラクティス)」によって見出すためにIn/Tangblitiesという共感/地域性/構造体を形にしてみる。」というものです。

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目の前あるものは、黒い風船(ハロウィーンのリサイクル?)、シルバーの風よけシート9枚、テープ(工事用の黒と黄色の柄、青、赤など鮮やかモノがたくさん)、タコ糸、はさみなど。
とにかく風船を膨らませてみる。そうすると両手がふさがって作業ができない。あたりまえのことだけど「それじゃ、風船をどこかに固定しよう」ということから始まりました。そして、寒いんだから風よけを作ろうと自然となるわけで、「協議」なんてしなくても、たちまちみんなでシルバーシートをガムテープでつなぎ合わせました。大きくなったシートは、強風でぶんぶんとちぎれそうになっているけれど、そんな踊るシートをみんなで支えながら大きな風船?凧?になった姿に、だんだんとテンションがあがってきました。

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打ち合わせなんてまるでいらなくて、誰かがシートのなかに入るとみんなが中に入る。大きなバルーンのなかで、ほっと一息。びゅうびゅうと吹いている風の世界とは、完璧に隔離されてシェルターは完成しました。とても単純な作業だったのに、とても素敵な空間が出来上がりました。

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そして、傘の代わりにシートをかぶって駅まで行こうと誰かが提案し、これも自然な成り行きでみんなで雨に濡れないようにシートをかぶって移動しました。決して難しいことをしているわけではないし、複雑な作業はなかったけれど、あっという間に完全なcommonsが出来上がっていたように思います。
こうして、みんなの共同作業は順調に進み、そして寒い寒い夜は飲みに行こうという自然な流れになったのでした。残念ながら飲み会には私は参加しませんでしたが、「協議」とか抜きでも十分に共同体って可能じゃないかと思わせてくれるワークショップでした。

In/Tnagiblitiesって、どうやって訳すか、何を伝えたいのかって、始める前はいろいろ悩みましたが、こうやって体感してみることで、理解しあえることはあると実感しました。それこそ「Practis」じゃないでしょうか。そして、言葉にださなくてもcommonsを意識できると思うのでした。
ありがとう。verina & merce。そして、冷たい雨の中で頑張った参加者のみなさん。
私たちって共生感ってうまれちゃいましたよね???

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嘉藤
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by a-a-n | 2011-11-15 10:44 | ドキュメント | Comments(0)
新・アートセンターとこよみのふねリサーチ
こんにちは、

先日は、何かとお世話になっているアーティストの新野圭二郎さんの
新しいアートセンターでのお披露目展覧会に行ってきました!

場所は東日本橋。
ばりばりのオフィス街です。

(作品・部分)


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このビルは、職場、住居、などの複合的な機能の登録がされていたビルで、
かつては中央区はそうしたビルの運営を支援していたそうで、

非常に興味深いスペースです。


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私の感想をいってしまうと、
かなり、よかったです。

見終わったときに新野さんが
「楽しんでいただけましたか?」
と声をかけてくださって。

はい、かなり。


何もバックにつかず、独自にやっている、壮大で大胆な構想を続けている

非常に貴重で興味深い活動です。

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その後は、数駅場所を移動し、
浅草で、日比野さんのこよみのふねを観賞。

横浜でご一緒した松下さんや3331で一緒に活動した中島さん、森君と再開。

東京で、屋形船という複雑な管轄をもっていそうなものを扱うことは
チャレンジングな活動と思いました。

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先日はある本を読みました。

アートもアーカイヴもそうですが、続けることって大変だけど
必要と思えば信じ込むしかないことだと思います。

10年後アートに関わっているかと聞かれたら、絶対YESだけど、

それが曖昧にエンカレッジされるのもまたアートの宿命なんでしょうか。
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by a-a-n | 2010-11-10 12:55 | ドキュメント | Comments(0)
AANアーカイブチャンネル「アートでいいさー!」始まりました
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AANの沖縄アーカイヴプロジェクトが始まりました!
http://www.a-a-n.org/tv/okinawa/

初日となった昨日は、レギュラー番組のほか、wanakio2008のオープニングパーティの模様が生中継されました!放送見てくれた人いたら、ぜひコメントください☆配信サイトからコメントを書けます。

レギュラー番組は、1日2回、お昼と夜にあります。生放送です!
メインキャスターは、地元で音楽ユニット「ケードロック」もやってるキュートな五味フミちゃん。先ほど放送された今日の「いいさ~!ニュース」ではwanakioアーティストのタノタイガさんがゲスト出演。爆笑トークあり、ニュースが後半は番組企画会議と化す?今後の展開が楽しみです。

「いいさ~!ニュース」PM12:00- 12:30
 ・本日のニュース
 ・本日のイヴェント
「今日のできごと」PM8:00-8:30
詳細はプロジェクトサイトをご覧ください。

また、昨日の初回放送分が、早くもwebにアーカイブとしてアップされました。
見逃した人はこちらをチェックしてください。
http://www.a-a-n.org/tv/okinawa/news.html

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AANの放送ブース

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「アートでいいさー!」放送ディレクター AAN武藤とアシスタントの小林"じゅんぺ"ちゃん。

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オープニングパーティ。グンデルサンシン・トリオの演奏。

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アーティストの水川さんの提案で、会場に来た女の子たちは「のこり湯ジュエリー」を身につけてパーティに参加!
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by a-a-n | 2008-11-16 15:03 | ドキュメント | Comments(8)
11/8-9「集まれ!アーティストイニシアティブ」
先日、AANはBankARTの主催する「集まれ!アーティストイニシアティブ」に参加しました。
全国より30チームが集まり、8つのテーマに分かれてアートと経済を考えるワークショップ。11/8(土)夜7時〜11/9(日)午後5時まで。11/7-8横浜市の創造都市シンポジウムも合わせれば、4日間にもおよぶ長い会議イベントとなりました。
その「集まれ〜」にAANからは、4人が3テーマ(アーカイブ/コンテンツ流通/プログラムシェア)に参加。どのトピックもアート・イニシアティヴにとってはお馴染みのもの。1.5日のディスカッションで簡単に答えが出る訳もありませんが、他のチームの事例を聞き具体的に議論するのは有意義なことです。
欲を言えば、一斉ブレイクを適度に入れてくれたら。いいアイディアはコーヒーブレイクの雑談から生まれたりします。

冒頭、東京ピクニッククラブさんの基調講演
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参加者のみなさん。この後、グループに分かれてディスカッションへ。
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そして今週末は、横浜から沖縄へ行ってプロジェクトです。
http://www.a-a-n.org/tv/okinawa/

O
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by a-a-n | 2008-11-13 00:33 | ドキュメント
ポートフォリオ・ミーティング@おきなわ時間美術館

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無事に「ポートフォリオ・ミーティングin沖縄」がおきなわ時間美術館(那覇市栄町市場商店街)で開催されました。

大勢の人に来場してもらいなかなかエキサイティング~な夜でした。
途中で記憶が無いですが、、、、泡盛おそるべし。

東京から岩井優氏が、プレゼンを慣行。
今回のためにAANにポートフォリオを提供してくれたTheHouse展のX棟メンバー7人の作品についても言及。会場では、wanakioにエントリーしている沖縄のアーティストが熱いまなざしでプレゼンに耳を傾ける。今回は、本人もwanakio参加のためにリサーチもかねているため、沖縄で何をしたいのかを説明すると、観客の期待がひしひとと感じられる。
みな、県外の作家の動きに注目しているし、期待もしている。
沖縄らしい汗だくのムードは悪くない。

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ちょうど隣接するギャラリーで展示している高校生たちも観客として聞き入ったいたが、wanakioディレクター宮城潤氏に突然振られて、コメントすることに。
自主的に展示を開催しようとしているだけに、しっかりしている。
みなさん、沖縄の将来を彼女たちに頼っている?!
アートのまなざしの純粋さに目頭熱くなる?!

沖縄出身で現在イギリス在住のアーティストも地元の熱い思いを胸にプレゼンを行った。
この土地が強い分、表現は多弁でエネルギーがみなぎっている。
今後の展開が楽しみだ。実際に来週末はwanakioエントリー作家のプレゼン大会。

そのプレイヴェントとしても注目されたに違いない。
AANが、持ち込んだポートフォリオをみな食い入るように見ている。ちょっというか、かなり嬉しい。多少は、AANの活動も役立っているのかな。
提供してくれたアーティストたちにも胸を張って報告できますね。
みなさん、いい感じのプレゼンでした。

11月に開催されるwanakioにAANも特別参加して、AANの活動を広めます。
こちらも、ぜひ乞う期待してください。
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by a-a-n | 2008-08-10 13:23 | ドキュメント



オルタナティブと呼ばれるようなアートの活動をアート・アーカイブの構築などでネットワークしていく団体のブログです。
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